原発なしで電気は不足しないのか
昨日、名古屋でのストップ浜岡と脱原発を訴えるパレード(デモ)に参加しました。
で、それに関連してネット上で目にした脱原発の主張への反論、疑問、批判の内容をざつと自分なりにまとめると、
1 これまで原発にさんざんお世話になっていたのに、急に批判するのはよくない
2 脱原発を主張する人たちだって今だってたくさん電気を使っていて所詮は原発なしにやっていけないではないか
3 原発なしに日本の電力はまかなえない、日本の産業だって電力がいるのだ、この豊かな生活を捨てる気があなたたちにあるのか。生活を変える気もないのに原発に反対しても無意味である
4 原発を止めたら、何をもって代替電源とするのか。火力発電だとCO2が出て、地球温暖化が進むのに、それでもいいのか
5 自然エネルギーでやっていけるはずがない。そもそも、自然エネルギー発電にも問題がたくさんある。原発に代わるものと言えるのか。原発は必要悪ではないのか
といったところでしょうか。
煎じつめると、
1)日本は原発なしでは、電力が不足する
2)原発の代替電源が火力でよいのか
3)果たして自然エネルギーで代替できるのか
という疑問であり、その奥には今の在り方を変えることへの恐怖があるように思います。
少なくとも、私は社会や文明のあり方や自分の生き方を変える必要を強く感じ、自分の生活を変える努力を始めていますが、同時に、私の中には、これまで通りでいることは楽だ、誰かがそういうことはやってくれてその恩恵に、自分は何も変えずに預かれたら楽だという思い、誘惑もあります。しかし、それでは、他の人に責任をとってもらう生き方だと思うので、そこから一歩踏み出そうと、おずおずと足を出してみたところです。
ところで、第一の疑問である原発廃止による電力不足を御心配の皆さま、これについては、どうやら心配なさそうですぞ。
だって、国際エネルギー機関がそう言ってますから。
ロイター通信によると、国際エネルギー機関(IEA)は3月15日に、「日本は原子力発電の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している、との見解を示した」そうです。「IEAの推計によると、日本は2009年に石油火力発電能力の30%しか使用して」いないとのこと。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20049520110315
さらに、名古屋大学の高野雅夫准教授による試算でも、原発なしで電力は大丈夫のようです。
http://blog.goo.ne.jp/daizusensei 「原発震災(7)原発を全部止めたら?」より引用。
「でも原子力発電所を全部止めたら、それは困るでしょう」という話がすぐに出る。しかし、どれほど困るのか、本当にやっていけないようなレベルなのか。具体的に考えてみようではないか。電気事業連合会【でんきの情報広場】HPのデータを使ってごく簡単に考えてみよう。
【年間総発電量について】
2009年の10電力会社の合計の年間総発電量は957TWh。(1TWh=1テラワット時=10億キロワット時)
そのうち原子力発電による発電量はその29%にあたる278TWh。http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_02/index.html
2009年の原子力以外の発電による発電量は、年間総発電量から原子力発電による発電量を引いた、957-278TWh=679TWh。
これは実は1985年の総発電量584TWhよりも多い。つまり1985年当時の電力消費量になれば、原子力発電所を全部止めてもやっていける。【ピーク電力について】
電力需給において大きな問題は、電力消費量が刻々と変わることである。一般に昼間多くて夜間少ない。夏多くて冬が少ない。電気はつくりおき(在庫)ができないというとても特殊な商品である。私たちが勝手にスイッチを入れるのにあわせて電力会社は発電所を動かしたり止めたりしなければならない。
問題は電力消費のピークである。これをまかなうほどの発電施設をもっていなければならない。一方で、夜になればその多くが止まっていることになる。これを出力調整というが、原子力発電所は出力調整ができない。これを無理にやろうとして原子炉が暴走したのがチェルノブイリ原発の事故である。原子力発電所は出力100%で維持するのが基本である。そうすると、火力発電所の出力を変化させて電力消費の変動についていくことになる。夜にはほとんど原子力発電所だけが動いているという状況になる。
原子力発電所を止めたとすると、夜は火力発電所を動かしていれば何も問題ない。ただ、夏のピーク電力近くは節電が必要である。どれくらいの節電をすればよいだろうか。過去の消費電力の最高値は、2001年7月24日15時の183GWだった。(1GW=1ギガワット=100万kW)
http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_05/index.html
現在の原子力発電所の発電設備容量は49GW。
http://www.fepc.or.jp/present/nuclear/setsubi/sw_index_01/index.html
したがって、原子力以外の発電所の設備容量は少なくとも183GW-49GW=134GWあると考えられる。
直近のデータでは、ピーク電力は2009年8月7日15時に171GWだった。http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_05/index.html
2009年の状況では、原子力発電所をすべて止めると、ピーク時に171-134GW=37GW不足する。
これは全体の37/171×100=22%である。つまり、ピーク時の電力消費の約2割を節電すれば原子力発電所がなくてもピーク電力をまかなえる。
ところで、1985年のピーク電力は8月29日15時の110GWである。この状況になれば原子力発電所を全部止めてもやっていける。
まとめると、総発電量で約3割、ピーク電力で約2割の節電によって、原子力発電所を止めても他の発電所の発電設備で電力消費をまかなうことができる。これはバブル経済をやっていた1980年代後半の電力消費量にあたる。なにか問題があるだろうか?80年代以降、人口の伸びは止まったし、産業部門の電力消費はあまり増えていない。一方、家庭とオフィスなどの民生部門の電力消費がとても伸びたのである。ビルがこれほど明るい必要があるだろうか?蛍光灯をLED照明に変え、必要にして十分な照明量にすれば、照明用の電力消費を一桁小さくすることができるだろう。
家庭では、バブル期以降、ホットカーペット、湯沸かしポット、暖房便座、エアコンなど、ようは熱のために電気を使うようになった。もちろんあれば便利であるが、それほど大切なものだろうか?
本当に大切なものはいったい何なのだろうか?この機会に深く考えたい。
しかし、こういうことを他人任せで考えてもらってもなあというわけで、少し自分で調べてみました。
2008年の発電電力量。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1006.htmlより引用。
しかし、資源エネルギー庁の統計資料( http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/jukyu/index.htm)
も眺めてみたのですが、理系科目をとっても不得意としていた私は、自信ある発言ができません…。情けない。
自分で考えるのは無謀であったか。
とりあえず、文系人間でも理解できる(と思いたい)『エネルギー白書 2010』を読んでみました。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-1.html
エネルギー消費の動向をみると、産業部門より民生部門の伸びが著しく、全体の消費量の約34%を占めています。
その民生部門のうちの41.3 %を家庭が消費している、ということは、やはり個々人で節電をするだけでも、消費電力を削減できるということか。
疲れて来たので、とりあえず、本日はここまで。