日本のファンタジー

 仕事が一段落し(といっても、すぐ次の段落が来るんですが)、一息入れようと荻原規子の『白鳥異伝』を読みました。これは、日本のファンタジー。三部作の第二作目にあたるものです。なぜ第一作から順を追って読まないかというと、理由は簡単、一作目の『空色勾玉』は図書館で既に借りられていたから。

白鳥異伝

白鳥異伝

 これ、お勧めですよ。書き手にかなり実力があると分かります。一度手に取ったら最後、最終ページまで、文字通り本を下に置くことが出来なくなりました。
 
 この作品、ヤマトタケル伝説を下敷きにして書いてある(だから、白鳥なわけね)んですが、物語世界や登場人物たちがどの人もどの人も魅力的。ちなみに私が一番好きなのは、主人公の二人、遠子(とおこ)と小倶那(おぐな)を助ける役回りの、お気楽でいつも軽口を叩きつつ実力十分、ユーモアと余裕をたっぷり持ち合わせ、女にもてまくり子どもには弱い菅流(すがる)です。いや、いいですよお。こちらまで、気が大きく、楽になって、余裕が持てる気がしてくる。理想だなあ、この人(おいおい。)

 ところで、この本を読んでいて、これは現代の若い人たちの抱える問題を上手く描いてるなあ、10代向けの小説とされているだけあるなあとつくづく感心しました。もし、私が高校生くらいでこの本を読んでいたら、もっとのめりこんで心を揺さぶられて、泣いていたかも知れない。かつて苦しんだ自分の問題がここに書いてあるから。今は幸いなことにその問題をかなりの程度乗り越えたので、おーっ上手い!と感心しながら読むに留まりましたが。

 ちなみに、『空色勾玉』は、日本を舞台とした大型ファンタジーとして評判になり、アメリカ、スウェーデンノルウェーでも翻訳されたそうです。フランス語やドイツ語にはならなかったんですかね?英語版、探してみようかしらん。この『白鳥異伝』もその後、訳されたのかなあ。

 前回触れた、ファンタジーと歴史背景の関連ですが、『ファンタジーと歴史的危機』なる題名の本を借りてきましたので、何か分かるかも。すぐには読めない(読まない)でしょうが、そのうち読んでみます。今、世界的ベストセラーになったというヘルガ・シュナイダーの『黙って行かせて』を読み始めたところなのです。アウシュビッツの看守となるために、4歳の自分を捨てて家を出ていった母親に、ずっと後になって再会して…という内容。  
 私はナチスに意識的に協力した人々(党員で上の方の地位だったとか、収容所で仕事していたとか)の子どもたちになぜか昔から関心があって、書評を見たとき、これは読まねば!と思ってしまったんですね。で、この本についての書評を見たとき、すぐにある本を連想したのですが、それについては、次回書きたいと思います。

 はるる