読書友達

 漫画家の吉野朔美さんが『本の雑誌』に連載されている本をめぐるエッセイマンガのシリーズが好きで、掲載雑誌を欠かさず(立ち読みで)読んでいます。買え!と本の雑誌社ただ一人の「炎の営業」マン杉江さんは叫ばれることでありましょう。雑誌は買ってないけど、単行本化されたものは全て買っているのでお許しくだされ。

犬は本よりも電信柱が好き (吉野朔実劇場)

犬は本よりも電信柱が好き (吉野朔実劇場)

 これが最新刊です。

 このシリーズを読んでいていいなあと思うのは、吉野さんの周りには本を読んだら語り合える仲間がたくさんいることです。互いに本の薦め合いや送り合い、一冊の小説をめぐって何人もの仲間が侃々諤々、賛否両論乱れ飛ぶ情景、なんかうらやましいぞー。

 私の周辺には、こういう読書友達はいないので、私がある本を読んで「すごい、すごい、誰かに話したい!」と思っても、なかなか話せない。これが、時たまですが、ちょっと淋しい。

 昨日読んだ本で、おおっと思ったのは、朝鮮戦争の結果、北朝鮮は人口の24.8%(追記:失礼、数字打ち間違いです。正しくは28.4%。約3割です)を失ってしまったということ。これが国家にとってどれほどの打撃だったかは想像に余りあるわけで、なるほど、この事実があれば、1960年代初めに盛り上がった在日の方々の北への帰国運動を煽り、受け入れた北朝鮮の意図は労働力確保だという説が、ずっと長い間定説のようになっていたのもむべなるかなと納得しました。(人口の14%を独ソ戦で失ったソ連日本兵捕虜をシベリアに抑留して労働力として使ったわけですから。←私の理解が間違っているかもしれませんが。)
 ちなみに、上記の情報が書いてあったのは、この本です。

朝鮮戦争 (東京大学社会科学研究所研究叢書 (第80冊))

朝鮮戦争 (東京大学社会科学研究所研究叢書 (第80冊))

 しかし、帰国運動について最近出た本(『帰国運動とは何だったのか』)では、北朝鮮の真の目的は、日本との国交正常化のためのパイプ作りだったということを指摘していて、そういうのを考えながら、どう思う?と他の人と話してみたーいと思うのですが、誰と話せばいいのだろー?となってしまうのでありました。ま、本を読んでいるといろいろありますです。

帰国運動とは何だったのか―封印された日朝関係史

帰国運動とは何だったのか―封印された日朝関係史

 いきなり話は飛びますが、この間ちょっと気晴らしのつもりで読んだ『漱石の孫』が意外といっては失礼ながら、なかなか読み応えがあり、中身の詰まった本だったので、改めて、夏目房の之介さんのファンになった私です。以前、『週間朝日』に夏目さんが連載されていた「デキゴトロジー:学問」というのがむやみに面白くて、前からファンではあったのですが、ますますファンになりました。マンガ論から夏目家に伝わるトラウマのことなど、最近、私はにわかインチキユンギアン(ユング派)となってユング心理学関連の本をかじっているものだから、なおさら面白かったです。おお、これはシンクロニシティだとか、これは個性化の過程ではなんて勝手に感心していました。(夏目さんからすれば、そういう読み方は余計なお世話以外の何物でもなかろう。)
 だから、なんだと言われても困るんですが、時にはこういう本を読んだ感想を誰かとしたいなーということですね。ブログでその一端をやっているということかな。

漱石の孫

漱石の孫


 はるる