帰国

 出発前にパリから最後の更新です。

 帰る前になんとかAt Bertram's Hotelを読了しました。
 ふーん、こういう話になりましたか。Miss Marpleの活躍がいま一つの印象ですねえ。とりあえず、Canon Pennyfatherが生きていてよかった。ABCでランク付けすると、B級って感じの読後感です。

 帰国便のお供は『国境の越え方』です。
 

〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)

〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)

 これから本当に国境を越えるからといって、How to 本ではないです、念のため。

 フランスに来て、こちらのキリスト教の底力というのか、やはり1500年以上の歴史があることの凄みをいささか体感した思いがしました。19世紀キリスト教が問題だらけだったとしても、キリスト教の根の下ろし方の深さには舌を巻く思いです。毎年1パーセンずつ受洗者が減っていても、フランスのキリスト教はもう終わりだという風には思えませんでした。
 これからのキリスト教の未来はアジアにあるとよく聞きますし、確かにそうなのでしょうが、ヨーロッパもほんとに侮れないなと改めて深く感じ入りました。(別にこれまで軽んじていたわけではないですが、要するに分かっちゃいなかった。頭では分かっていても体でわかっていなかったというか。)
 でも、歴史が浅いなら浅いことに、社会における少数派なら少数派であることにもメリットはあるわけで、日本の教会も弱点だと思えることを逆手にとって長所にできないかな、立場としては初代教会に近いわけだしなどと考えたりしています。まだ混沌としていますが。

 もう12年も前、初めてフランスに来たとき、私のフランスへの印象は恐ろしく悪く、なんだかフランス人の笑顔を全く見なかった(本当は見ていたんでしょうけど)という記憶しかありませんでした。こんな比較は失礼なれど、フランス人は京都人みたいだと思ったものです。(その心は、内の人と外の人への態度を使い分ける、よそ者に対して慇懃無礼、です。すみません、京都の人。私の偏見を許されよ。)
 その印象は5年前に再び訪れた際、かなり是正されて好印象になっていたのですが、今回はそれに輪をかけました。
 今回来てみて、「どーしたんだ、フランス人、EUに入って回心したのか?」と訊きたくなるほど、どのフランス人も(それこそパン屋のおばさんからメトロの窓口のおじさんまで)笑っているという印象が強く、これが一番の驚きでしたね。
 この変化の一番の理由は、私の心理的姿勢が大きく変わったことだろうと思いますけれど、フランス人自身も変化しているでは?やはりEUの一員になったというのは大きいことなのかも。まあ、一介の旅行者なので分かりませんが。

 そういえば、英語学校の宣伝がメトロで目に付きましたねえ。英語できないとまずいという危機感がフランス人の中にもあるんですかね?
 同年代のフランス人と話していたら、私たちは何年も学校で英語を勉強したのに少しも英語が上手くならず、話せない人も多くて、これがフランスの大きな問題なのだと、まるでどっかの国のようなことを言っていて、へええと驚かされたものですが。
 
 これがフランスに住むとなるとまた話は別で、きっとフランスのいやな面をたくさん見るのでしょうが、5週間足らずの短期滞在ですからね。今回はフランスと一番幸せな接触の仕方をしたということでしょう。言葉が出来ないということも、そうなればおのずとお互いニコニコしているしかないので、プラスに作用したということでしょうし。
 というわけで、とりあえず好印象を抱いて帰国します。

 今日は昨日までの天気と打って変わってとてもいいお天気です。なんだか祝福されているみたいで嬉しいな。
 Merci beaucoup, Paris!

はるる