時差ぼけしながら
昨夜、無事に東京に帰還。
ド・ゴール空港で待ち時間にふらふらお店を覗いていて、Kazuo IshiguroのNever Let Me Goを買ってしまいました。お財布に20ユーロくらい残っていたもので、つい。お土産のチョコレートも買ったんだけど。
- 作者: Kazuo Ishiguro
- 出版社/メーカー: Faber & Faber
- 発売日: 2006/03/02
- メディア: ペーパーバック
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それで、離陸してから食事後に飛行機内が暗くなるまでの間はカズオ・イシグロの新作(と思う)を読んでいました。
面白い。主人公のKathy.Hが語る形で小説は進んでいくのですが、興味深くてぐいぐい読ませます。A page-turnerというTime の評価は正しい。三分の一くらい読んだところで消灯時間になったため、途中で止まっていますが、続きが気になっています。
その後、夜中の三時に機内が再び明るくなり、フライトアテンダントさんたちに「おはようございます!」(3時なのに、朝がきたことにしてしまうわけね)と起されてからは、『国境の越え方』を読んでいました。これも中途なれど、良書と感じる。いい本を買ったと嬉しくなりました。購入した本を読んでみてはずれだったと思うと、支払ったお金を思っていささか悲しくなりますもので。
昨夜というか今日未明に、案の定、時差ぼけで目が覚め展転とし、ああ、時差ぼけによる苦しい一週間が始まったなあと思いました(;_:)。で、明け方寝入ってしまって、起きたら午後2時過ぎていましたし。目覚めた後も、頭がモーローとしていて今日は本当にゾンビ状態でした。たぶん、明日もそうでしょう^^;。それでも、急いでやらねばならない仕事関係があり、ちょっぴり仕事。明日はもう少し頑張ろう。
眠れない時間、『漢字と日本人』を読み、ぱらぱら『入江相政日記』第二巻、第三巻から拾い読みしてました。
- 作者: 高島俊男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/10/01
- メディア: 新書
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『入江日記』のほうは、Le Soleilがらみで読み返したくなったからです。(ところで、昭和20年の侍従長は藤田さんでした。入江さんが侍従長になるのは69年なんですね。あの映画の配役表を見たら、佐野さんの役は単に「侍従」となってました。)
敗戦間近の1945年8月8日の日記に「アイスクリームや結構なお菓子をいただく」という記述があり、ほ〜ぉ、やはり上の階級の方々は違うねえと思ったり。『若き日の詩人のたちの肖像』にも、主人公が近衛もと首相との会食に呼ばれて、やはり敗戦間近の時期に握りずしをご馳走になる場面があり、主人公が上の人間はこうなのかと驚く(というか呆れる)場面があったように記憶していますが、上の人びとの生活はそうだったんですね。
- 作者: 堀田善衞
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1977/10/20
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- 作者: 堀田善衞
- 出版社/メーカー: 集英社
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マッカーサーとの最初の会見をどう書いているかなとページをめくると、第三巻の1945年9月27日付けに
(前略)9時50分御出門。(中略)御途中の交通整理もなく米国大使館に成らせられ、マッカーサー御訪問、三十五分に亘って御会談。マッカーサー始め一同に非常によい印象をお与え遊ばされた由である。まあこれで一段落で何となく安心した。
とありました。ふーん。思わずあの映画のシーンを思い起こしてしまふ。もし、会見があの映画どおりだったとしたら(たぶん違うでしょうが)、「非常によい印象をお与え遊ばされた」と言えるとは…。まあ、映画は映画の意図に沿った演出をするわけですし、この会見の全貌はいまだ明らかになってないらしいですから(なっているのかも知れないけど、よく知らない)、別にこだわる必要もないですが。このときついて行った藤田侍従長の回想録もちょっと読んでみたいなあ。
さらになんとなくあちこち拾い読みしていたら、米軍兵士たちが昭和天皇の写真をとる話が出てました。(映画の写真のエピソードとは何も関係ないです。)
1946年4月7日の記述より。
(前略)。一時四十分より長者崎方面へ御出まし。同所附近で進駐軍の兵三名が御後をつけて来て御写真をとらせてくれといふ。葉山署長が断ってゐたが、お上はかまはないから撮らせてやれと仰せになる。それが拝写すると、そこに来合はせた陸軍二名、海軍一名の将校も拝写した。それから浜伝ひに南庭の海岸御門からお入りにならうとした。又お後から四人の兵がつけて来て是非拝写させてくれといふ。拝写を終わつてから自分等と一緒に拝写させてくれといふ。予がこれは断つた。それは簡単に諒承した。次に彼等の一人が手を出した。お上も御気軽に御握手を賜はつて非常に喜んで帰つて行つた。
なんだか天皇の御威光は米軍にも及んでいる印象を与える文章だなあ。
映画の「チャーリー、チャーリー」とはえらく違っております。映画は天皇とアメリカの関係をあのように表現しているのかなとかいろいろ考えました。
さて今日の午後、写真を現像に出しに行ったついでに図書館に行き『八月十五日の日記』を借りてきました。本当はそんな本を借りている場合じゃないんですけど、1945年8月15日をどのように記述しているかをいろんな人の日記から抜粋してまとめた、実は私がそのうちブログ上でやってみたいと考えていたことそのまんまが本になっていたので、つい。(監修が永六輔。)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/05
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皇族がどう書いているか。
梨本宮伊都子
(前略)御自身様(引用者注:昭和天皇)は万難を御しのび遊ばしても赤子をたすけむとの有難き御大心、只々恐れ多ききわみ、涙はこみ上るのみ。光かがやける三千年の日本にたえられぬ汚点をつけてしまった。(中略)しかし、とてもとても筆にはつくしがたきくやしさ。やる方なく、アアこれで万事休す。昔の小さな日本になってしまふ。(後略)
(前略)私は直立して詔書の放送を聴きつつ、涙が出るのを止めることができなかった。
わが国では天皇は国民とまったく隔てられ、外部からうかがい知ることができない。たまの行幸でも、近年は警戒が非常にやかましく、国民は遠くはなれて陛下を拝するほかはない。陛下の御言葉を一般国民は直接聴くことはまったくできない。天皇は生神さまとして、宮城内に祭りこまれていた。
本日、国民はラジオで陛下の真の御言葉の詔書を聴いた。まったく破天荒のことだ。しかし、それは終戦の詔書である。国民は夢にも思わなかった敗戦、降伏による終戦をはじめて知ったので、今まで極度に緊張していた精神は急激にゆるみ、一時はまったくぼんやりして、放心虚脱状態となり、次いで、ある者は喜び、ある者は憤慨した。
(中略)
わが国は歴史上、未曾有の大国難に遭遇した。われらはいたずらに感情に激せず、自暴自棄に陥らず、冷静沈着に世界全般をひろく観察し、わが国敗戦の事実を深く認識し、その原因を研究し、忍び難きを忍んでこの国難を打開しなければ、日本は滅亡するだろう。明治維新当時の小日本に押し込められるわが国民は、今までの過失を今後の戒めとして心機一転、今よりただちに道義と文化の高き民主主義的平和国家としての新日本の建設に発足し、すみやかに戦争による被害を回復しよう。戦争はもうこりごりだ。今後は軍備の全廃、戦争の絶滅、世界の平和、人類の幸福に貢献しようとする人類最高の使徒の先駆者となって、努力しようではないか。
いやあ、この後半、驚きました。1945年8月15日にこれを書いたわけだ。敗戦当日に皇族がこう書いているんですね。面白い。
それにしても、8月14日まで戦争してて、特攻隊が突っ込んで、天皇陛下万歳とやって、「天皇の赤子」がどうのと言っていたのに、8月15日には「今までの過失を今後の戒めとして心機一転、今よりただちに道義と文化の高き民主主義的平和国家としての新日本の建設に発足し、すみやかに戦争による被害を回復しよう」って、…なんだかなあ。この軽さ。愕然としました。民主主義ってなんだか分かっているのかっ!と訊ねたくなりましたよ。脱力。
それにしても、日本の領土拡張はまこと大事だったんですね。日本の領土がもとに戻ることがこんなに悲しいことだったのか。面白い。
フランスがインドシナやアルジェリアで彼らの独立を止めようとして戦争したことを思い起こしつつ、宗主国の心理に思いを馳せました。
『支配の代償』でしたっけ?植民地所有が宗主国(具体的にはイギリス)に与えたメンタリティへの影響を扱った本は。(←真面目に読んでないので、内容もろくに紹介できない。^^;。勉強不足過ぎ。>_<)それを思い出したりして。
- 作者: 木畑洋一
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
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ちなみに『高松宮日記』も覗いてみたのですが、8月15日、高松宮は淡々と事実を書き連ねているのみで何ら感想は書かれていませんでした。
高松宮日記〈第8巻〉 昭和二十年〜二十二年 (付 略年譜・索引)
- 作者: 高松宮宣仁
- 出版社/メーカー: 中央公論社
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では。時差ぼけとの闘いにいってきます(要するに寝る時間。)
はるる