よそ者でない人

 昨晩、友人と一緒にフランス映画『合唱が出来るまで』を観てきました。三人の指導者の教え方の見事さと、最初はどうなることかと思っていたのに、見事な音楽として立ち現れてくる合唱の素晴らしさに感動。

 おかげで、やっと私に取り憑いていたボビーを降ろせます。はあ〜、やれやれ、重かった(違うって。)

 なにせ最近はオタクの道をたどりつつあって、

・『13デイズ』でマクナマラやボビーがそっくりさんだとよくいわれるけれど、実はそっくりさん大賞の栄誉に輝くのはジョン・マッコーンCIA長官役の人だ!

とか

・部下にいつも背広を着てきちんとネクタイを締めていることを要求した(GメンシリーズのFBI捜査官の服装を思い出しましょう)フーヴァーFBI長官のもとへ、ロバート・ケネディ司法長官は上司だからという理由でアポイントメントもなしに、腕まくりしたシャツに緩めたネクタイ姿でズカズカ会いに行って怒りを買った(どーしてわざわざけんかを売るような真似をするんだ、ボビー)

 とか、どうでもいいトリビアにはまっている私。アブない・・・。

 あ、ついでに言うと、映画のノベライズ本は映画のラストシーンにずっと流れるRFKの演説を、キング牧師が殺された夜の演説と解説していますが、あれは間違いですね。

BOBBY 悲劇のケネディ兄弟!! ジョンに続きボビーも撃たれた

BOBBY 悲劇のケネディ兄弟!! ジョンに続きボビーも撃たれた


 正確には、あれは翌日の4月5日にRFKがした演説です。 
 暗殺当夜にしたのは、以前3月3日にご紹介した短い即興演説のほう(↓これです)。
 

 ※ただし、演説全部は聴けません。後半は、撃たれたRFKの姿と犯人を取り押さえる人々の声などのパートになっています。


 映画で使われているのは、アダム・ウォレンスキー、セオドア・ソレンセンと共にボビーが半徹夜して書いた次の日のもう少し長い演説です。
 
http://www.angelfire.com/pa4/kennedy/speech.html


※上から5つ目が暗殺当夜の演説、6つ目のOn Mindless Menace of Violence が映画で使われた演説です。これも本当に名演説ですね。彼がした演説の中でも最高ではないでしょうか。


 とにかく、さっさと彼をアーリントン墓地に葬ってしまおう!と思います。
と言いつつ、もうちょっとだけ書くんですが(^_^;)。そうでないと気が済まない。まったく・・・(~_~;)。
 

 ある人が、RFKのことを「一つの世界から別の世界へ移動することができ、どこにおいても決してよそ者ではなかった人」と表現していて、これは上手い表現だなあと、私は思っています。(Robert Kennedy and His Times 793p)

 貧しい白人の世界においても、黒人の世界においても、ヒスパニックの世界においても、ネイティブ・アメリカンの世界においても、彼はよそ者ではなく、その世界の人たりえたということだと勝手に解釈しています。

またある人は、RFKについて「彼なら、孤独な老女が感じていることを正確に感じ取ることが出来ると思う」と評していましたが、ボビーは共感能力の高い人だったから、それもなんだか出来た気がするなあ。
 彼は、年を取った女性の世界でもよそ者ではなかった、と。

 もっとも、お金持ちの世界ではよそ者だったみたい。

 68年の『フォーチュン』誌が行った企業アンケートの結果、最も大統領になって欲しくない人第一位はロバート・ケネディだったし、国内の主だった企業は既に敵に回していたし(本当に敵の多い人だ)。

 
 RFKは各地のインディアン居留地に何度も足を運び、そこで見たインディアン(ネイティブ・アメリカン)の窮状に深く心を痛めました。

 1967年に彼は上院にインディアンの教育問題を検討する委員会を作るよう説き伏せました。
 そして、さらに実態を知るために、ボビーはある居留地の学校に行き、そこで教えている教師たちに、彼らがインディアンの文化と歴史を教えているかどうか尋ね、図書館に彼らの過去を学べる本があるかどうかチェックしました。人びとが彼に見せたのはたった一冊の本で、その表紙には白人のブロンドの女の子の頭皮をはぎとろうとしているインディアンが描かれていました。(怒りに燃えるRFKの姿が目に浮かぶ・・・^^;)。

 その同じ日に、その居留地の一人の赤ちゃんが飢えで死んだと知った時のボビーの言葉。勝手に認定ボビーの名せりふです。(Robert Kennedy and His Times 793p)
 

 When that baby died, a little bit of me died, too.


 ナヴァホのリーダーだったアニー・ウォネカがボビーに対して「インディアンはいつだってテレビの西部劇でぶたれている。そして、今も私たちは役人からぶたれているわ」といったとき、ボビーは「アニー、私は君たちの味方だよ。」(Annie, I'm on your side.)と言いました。
 そしてその晩、ディナーの席上、彼の目の前にその責任者が居心地悪げに無言で座っているのにもおかまいなく、ボビーは痛烈にその州政府のインディアンの扱い方を攻撃しました。(RFK  242p)

 そんなRFKを表現している私の好きな発言。

GEORGE REEDY: Bobby was intense. When he focused on something, it was almost like a laser beam. You could almost feel it cutting your skin.


 カリフォルニア予備選投票日の四日前、RFKはジャーナリストで友人のジャック・ニューフィールドに言いました。

 もし自分が候補者に選ばれなくても、今ならその事実を受け入れられると思う。もしそうなったら、ただ上院に戻って僕が信じていることを話すよ。そして、72年には出馬しない。誰かが、黒人について、インディアンについて、メキシコ人について、貧しい白人について話さなきゃならないんだ。たぶん、それは僕が一番上手くやれることなんじゃないかな。・・・これらの問題は、今はもう僕のことよりももっと大切なんだ。 RFK 271p


 アンバサダーホテルで勝利演説をする数分前に、RFKは選挙参謀で親友のケネス・オドンネルに電話をかけて、「これでやっと兄の影を払いのけた気がする」(I feel now for the first time that I've shaken off the shadow of my brother.)と言いました。

 こういう言葉が、彼の悲劇性を高めてますね・・・。

 彼が撃たれたのは、それから30分も経たないうちだったと思うと。


  はるる