この映画は実話に基づいています

 最近、DVDで実話に基づくという映画を三つ観ました。

 5人の実在の武器商人を元にして人物像を作ったという『ロード・オブ・ウォー』、1971年にソウルで起こった空軍特殊部隊の反乱を題材にした『シルミド』、そして公害問題を起こした大企業を相手にアメリカ史上最高額の和解金を獲得する立役者となった実在の女性を描いた『エリン・ブロコビッチ』。

ロード・オブ・ウォー [DVD]

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 かなり乾いた感じの主人公の語り口が、武器売買とはこんな感じかと感じさせて怖い。 


シルミド/SILMIDO [DVD]

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 これは「仁川沖の島に配属されていた空軍特殊部隊24名が、待遇への不満から反乱を起こし、ソウルにはいって銃撃戦を展開した」(武田幸男編『朝鮮史』377頁)という事件を、独裁政権による部隊の冷酷な切捨てとそれへの抵抗というドラマにしたもので、映画は感動したけど、こういう脚色はいいのか?と思わないでもなかった映画です。


 

朝鮮史 (新版 世界各国史)

朝鮮史 (新版 世界各国史)

 この映画、男性しか出てこなくて、ホモソーシャルという概念を考えるのに最適な映画だと思いましたね。

 それと、モラルジレンマについて考えるにもいい題材かも。ただし、この場合、自殺と言う選択肢がありえるので、完全なジレンマではないでしょうが。


 ついでに文句を言わせてもらえば、平壌に乗り込んで金日成を暗殺しようかという特殊部隊としてあんな程度の訓練でいいのでしょーか?684部隊の皆様。
 射撃訓練なんて、金日成は撃ってくださいとばかりにじっとなんてしていないだろうし、あんな動かない的ばかり狙って訓練してもなあ…と思うのですが。
 
 平壌に行くというのに、平壌の市街など地理に関する知識を教え込んでいるふうでもなかったし。

 この映画の焦点は金日成暗殺計画ではなく、あくまでも非情な政府の仕打ちとそれに敢然と立ち向かった男たちにあるから、訓練についてはリアルな感じにしてないかも知れませんけれど。

 とはいえ、アン・ソンギの演技に感動し、ホ・ジュノ演じたチョ2曹が飴の袋をバサッと落とすシーンにはじいんときてしまいました(観た方でないと分からない話題ですみません)。
 純粋に娯楽映画として観れば、佳作では。


 こういう実話に基づく映画というのは、事実とエンターテイメント性をどう配分するか、そのさじ加減が難しいところなのだろうというのが、三本観て感じたところ。

 『ロード・オブ・ウォー』は事実に依拠しながらもフィクション性は高く、しかし武器売買の真実の一片は伝えているという、事実より真実を重視というスタンスで、『シルミド』は核になった出来事は史実だけど、資料も証人もあまりいないしということを言い訳に、相当に娯楽性を高くした話という印象を受けるもので、事実とエンターテイメント性の融合という点で最も私が気に入ったのは、『エリン・ブロコビッチ』でした。



 ドキュメンタリーと違いこの手の映画は、事実をそのまま再現するだけでなく、事実を整理、圧縮して伝えるためには脚色もするという文法を持っていると思うのですが、それが三本の中でこの映画が一番上手くやっていたように思いました。

 なによりも、エリンの母性や人々への共感能力、行動力に心動かされ、こういう人に弱い私は、素敵な女性だわ〜とすっかり惚れてしまう始末^^;。


 ご本人のサイト↓。ご本人も素敵です。
 本当に胸が見えそうな服装してます。映画どおりだわ〜。

Erin Brockovich | Consumer Advocate


映画と実際はどこが同じでどこが違うかが書かれているサイト。

Erin Brockovich True Story at Reel Faces
 
 これによると、たとえばブロコヴィッチさんが映画で描かれていたように600人以上の電話番号を暗記しているなどむやみと記憶力がいいのは、失読症(dyslexia)に苦しんでおり、何でも記憶するようになっているから、らしい。

 映画の中で「読むのが遅いの」と言っていたのは、そういう意味だったのか〜。

 はるる