祝島

 中国電力が瀬戸内海にある山口県の長島に建設中の上関原発に対する祝島の方々の反対運動については、DAYS JAPANなどで読んではいました。

 が、読んで大変だと言うだけで、具体的行動は何一つとらない怠惰かつ傲慢な態度で今日まできた私です。

 そんな、過疎地にある原発からエネルギーを収奪しながら、そのことにいささかの痛痒も感じず、のほほんと生きている都会の住民を尻目に、祝島の人々はどんどん前進していっているのだという、己の蒙昧さと極楽とんぼさを揺さぶられた記事が、「島と海と原発」上下(2011年3月14日、21日 「中日新聞」朝刊掲載)の、特に下の記事でした。

 以下は記録として。

 中国電力山口県上関町の長島で準備工事を進めている上関原子力発電所。建設をめぐる状況は、11日の東日本大震災で局面が一変した。

 東京電力福島第一原子力発電所で外部に放射能が漏れる重大事故が発生。それを受け、中国電力が15日、上関原発の準備工事の一時中断を発表したのだ。

 原発の安全性への不信感は高まる一方。では、原発以外で必要なエネルギーをどうまかなうのか―。

 そんな課題に挑戦する試みが今年一月から、上関原発予定地の西方四キロ、祝島で始まった。島内で必要なエネルギーを全て自然エネルギーで供給しようというプロジェクトだ。上関原発の推進派住民が「そんなことは無理」と受け流すのに対し、反対派団体は「上関原発を建てさせない祝島島民の会」は実現に向け、着々と動いている。

(中略)

 「原発も電源になっている中国電力の電気を使っているのに、原発反対を言うのはおかしい」。

 そんな推進派住民からの批判を乗り越えようと、島民の会がたどり着いたのが、自然エネルギー100%自給構想だ。

 構想を進める中核は、島民の会が中心になってつくった「祝島千年の島づくり基金」。主なエネルギー源に太陽光や風力を想定し、木くずも燃料にできると考えている。当面の資金は寄付が中心。プロジェクトに共鳴する音楽家などが応じてくれる見通しという。

 (中略)

 島内の資源の有効活用という点では、氏本さん(氏本農園代表:引用者注)は既に実績を積んでいる。遊休農地を借りて四十頭の豚を放し飼い。餌には、家庭から出る残飯、販売用の規格から外れるビワを譲り受けている。氏本さんが経営する食堂の料理の素材も、農家から差し入れられた野菜や氏本農園の豚など。

 氏本さんは「島の資源を有効活用すれば道が開ける。原発に頼らないまちづくりは可能だ」と自立の精神を訴える。

 (中略)

 二人(NPO法人エネルギー環境政策研究所所長飯田哲也氏、映画監督鎌仲ひろみ氏:引用者注)が脱原発の手本と考えるのがスウェーデンデンマークだ。飯田さんは「デンマークのサムソ島が自然エネルギー100%自給を実現させている」と指摘。デンマークには原発はなく、人口約四千三百のサムソ島での自然エネルギーへの転換は、国家プロジェクトとして進んだ。主なエネルギー源は風力だ。

 山戸(孝、島民の会事務局:引用者注)さんは「福島原発の重大事故が起きた今こそ、国民に環境・エネルギー問題を考えてもらいたい。私たちの試みへ理解も広がるはず」と話す。(白井康彦)

 祝島に関する映画は:

ミツバチの羽音と地球の回転」 http://888earth.net/index.html 


「祝(ほうり)の島」  http://www.hourinoshima.com/

 

 「命を賭けて何かやったことがあるか!」

 体を張って反対運動をしている女性が叫ぶこの言葉が心にまっすぐ突き刺さる。

 都市住民、しかもマンション暮らしの人間として、一体どんな形で電力会社の独占状況に抵抗できるのか、原発を拒否した自然エネルギーを中心としたエネルギー供給へと転換できるのか。

 そう言っては、何もしない、見ない、考えない、命を賭けたりしない、という生き方を、私はしてきた。

 一時の熱病のように、今だけ盛り上がるのではない形で、持続可能な行動を、どうするのか

 私自身に問われている。
  
 はるる