ハンマースホイ
先週、用事で東京に出かけた際、この機会を逃したらもう機会はないからと、上野の西洋美術館で開催されている「ハンマースホイ展」に足を運びました。
上野駅を降りられた多くの方々は「フェルメール展」に向かっておられましたが、私はフェルメールよりハンマースホイです。
ハンマースホイはフェルメールから影響を受けているので、どちらも見たらいいのでしょうが、朝9時過ぎの段階で、はや「フェルメール展は40分待ちです!」などとアナウンスしているのを耳にすると、フェルメールはもういいやという気分になってしまいました。
後姿の女性や誰もいない室内、あるいは誰もいない風景画をよく描いたデンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイ。1864年に生まれ、1916年に亡くなりました。
NHK教育の『日曜美術館』の特集で、彼が執拗に描き続けた、後ろを向いて決して顔を見せようとしない女性像に強く心を引かれ、どうしても彼の絵を見たいと美術館に足を運びました。
しーんと静まり返って、音も声もない世界。
決してこちらを振り返ることのない女性。(モデルはいつも画家の妻)
取っ手がなく決して開かないドア。
扉が開かれているのに、誰も入ってくる気配がない部屋。
人が誰もいない宮殿。人類はもう滅亡したかのように。
コミュニケーションのない真空のような空間。
息を詰め、全身の注意力をこめて床に落ちる日の光を見つめているような、そんな印象を受ける世界。
ハンマースホイ自身が、静かな内向的な変人だったそうですが、奥さんと二人、ひっそりとコペンハーゲンの街に暮らし、死んだ画家です。
よく見ると細部が不気味で、決して人と人とをつなぐような絵ではないのに、なぜか心に食い入ってくる絵でした。
こういうお高い画集(洋書)もありますが、私は展覧会での図録で十分。
展覧会は明日までです。
はるる