現代短歌第三弾

第三弾はちょっと音の楽しいのをいくつか。
欧米の言葉が韻を踏むのとはまた違う音の遊びというところでしょうか。
「いずこより凍れる雷のラムララムだむだむララムラムララムラム」 
岡井隆
この歌は、私がアメリカに行く前に見つけて好きになったもので、ララム…という音がとても心地よいので、シカゴでもこれを繰り返し唱えたものでした。
「べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊」
永井陽子
これも生き生きとはずむ感じが良く出ていていいと思いません?この活用形を鼓笛隊の行進や演奏の音にあてはめた作者は偉い!
「くるるくろくろくるるぐうゆさはりの上の曇日に山鳩が鳴く」
河野裕子
「曇日」にはくもりとルビが振ってあります。ちなみに「ゆさはり」とはブランコのこと。短歌や俳句読んでいると、語彙が増えます。ブランコだけでも、いろんな言い方があることが分かるもの。「ふらここ」とか「ふらんど」とか「半仙戯」とか、漢字が出なくて書けないやつとか。
「にぎやかに釜飯の鶏ゑゑゑゑゑゑゑゑゑひどい戦争だった」
加藤治朗
この「ゑ」という文字の使い方が素晴らしいですねえ。「え」とか「ヱ」とかでなく「ゑ」というところが、屈折しているし、音も濁ったような印象を与えるし、時間的にもいろいろあったんだな、と思わせるし。日本語って、見る言語でもあるというところがabcしかない欧米語とは違うよね。
おっと、ご飯を作りに行かねばならぬ。最後にここ数日、頭の中で繰り返している歌をひとつ。
「アフリカよわたくしはもう不安です胞をどうか開いてください」
長谷部美奈江
「胞」には「ふくろ」とルビが振ってあります。短歌って、人々が共通して漠と抱いている思いや意識を明確にさせるツールなんだなと思わせられました。こういう気持ちあります、私の中に。
はるる