東電をめぐる暗闘

 またまた日経オンラインから、記事の抜粋です。
 そもそもの記事は、日経ビジネス 2012年2月13日号12ページ、「−東電問題の陰に枝野・橋下の暗闘−」より。

 

 今月3日、東京電力の西澤俊夫社長は原子力損害賠償支援機構の運営委員会に出席。4月に予定する平均17%の企業向け電気料金引き上げの根拠を説明し、発表前に機構に値上げを説明しなかったことを陳謝した。
 「総合特別事業計画に関わる東京電力経営判断は今後、前もって報告してほしい」


 機構の下河辺和彦・運営委員長はこうクギを刺しながらも、賠償請求の事務処理が進んだことなどを評価。東電が求めていた6900億円の追加の賠償資金援助を同日付で枝野幸男経済産業相に申請した。東電の2011年4〜12月期決算の発表期限は今月14日。枝野氏がその前に認定することにより、東電はひとまず債務超過に陥る事態を避けられる見通しだ。

(中略)

 東電は今後の廃炉費用負担などで債務超過に陥りかねず、総合計画には1兆円規模の公的資金による資本注入を盛る予定。さらに、家庭向け電気料金の最大10%値上げ、定期検査で今年3月までに全機停止する柏崎刈羽原発の2013年度中の再稼働などを踏まえた収支計画が明記される方向だ。


 最大の焦点になっているのが、資本注入による国の経営権の取得問題。機構は議決権付き種類株を中心に資本注入し、定款変更など重要な決議のできる3分の2以上の議決権を得ることを視野に入れ、少なくとも議決権の過半を握る方針だ。東電の事業改革を進め、発送電一体の見直しなどの電力制度改革につなげる狙いがある。枝野氏は「過半を握るまで交渉から降りるな」と指示しているという。


 これに対し、東電は「民営でありたい」(勝俣恒久会長)と経営権を手放すことに強く抵抗している。経産省関係者によると、東電は資本注入を受け入れたとしても、議決権のない優先株を中心とし、国の議決権を3分の1未満にとどめるよう主張。勝俣氏らが中心となり与野党議員への工作を周到に進め、「機構包囲網」を狭めている。


 財務省幹部が「賠償や廃炉などの責任が国に回ってきかねない」などと、国が経営権を取得することに懸念を表明しているのも、東電の働きかけが功を奏しているとの見方が有力だ。
 

 昨年12月、東電が機構に事前の報告もなく、突然、企業向け電気料金の平均17%引き上げ方針を発表したのも「家庭向けも含め、電気料金の大幅値上げが実現すれば、資本不足は当面回避できる。廃炉費用は最終的に国が面倒を見てくれるはずで、資本注入など必要ない、という東電の意思表示にほかならない」と、経産省幹部は憤る。


 様々な関係者が参戦し、泥仕合の様相を呈してきた東電の実質国有化問題。枝野氏の意向を知る民主党議員や経産省関係者は、こう口を揃える。
 「枝野さんの心情、役回りを理解しようとしない東電幹部との間で、ボタンの掛け違いになっている」
 

枝野氏が東電の経営権取得にこだわるのは、資本注入が東電に対する安易な救済と受け止められるのを避けたいことが大きな理由だ。枝野氏に近い関係者は「枝野さんは橋下徹大阪市長の動向を最も気にしている」と語る。


(中略)

 橋下氏は京都市など周辺自治体首長と連携しながら、関西電力に対し、6月の株主総会で、原発への依存度低下や発送電分離を株主として提案する意向を示している。
 

 今のところ、東電の国有化問題に明示的に参戦していない橋下氏だが、大阪府市統合本部特別顧問として橋下氏を支える経産省OBの古賀茂明氏や、橋下氏との連携を図るみんなの党渡辺喜美代表らは東電の法的破綻処理など厳格な対応を唱えている。


 「古賀さんや渡辺代表らにとっては、公的資金投入や、電気料金引き上げ、原発再稼働という“アメ”だらけで東電を救済・温存するとは何事か、電力業界と官の癒着構造の温存だ、という攻撃対象になる。これに橋下氏が乗って、大ネガティブキャンペーンを張られることを枝野大臣は危惧している」。経産省関係者はこう解説する。


 しかも、今後、消費増税論議がヤマ場を迎える。財務省の言いなりで増税する一方、東電を温存し、電気料金も上がる。そんなことは許さない、東電は解体し、脱原発も進めるべきだ――。大阪維新の会の代表を務める橋下氏の提唱でこんな論調が燎原の火のごとく燃え盛れば、次期衆院選の一大争点に浮上するのは必至だ。

 そうなれば、与野党から賛同者が相次ぎ、積み上げてきた東電処理策も、税と社会保障の一体改革も水泡に帰す可能性が出てくる。さらに、枝野氏も格好の攻撃対象になり、政治生命に黄信号が灯りかねない。こうした事態を避けるには、一時的に東電を公的管理することで「新生東電」を印象づけ、電力改革に道筋をつけるしかない。枝野氏の本音はそこにあるのだという。


 「橋下さんの影がちらついているからこそ、東電に“アメ”をあげるにも確信犯的に厳しい態度を示さざるを得ない。そんな枝野大臣の真意を汲み取ろうとしない東電が資本注入を“ムチ”だと誤解し、態度を硬化してあれこれ画策するから、事態が複雑になっている」。経産省幹部はこう嘆く。

 なんだかなあ。政治の世界って…。

 今日の中日新聞に、結局事務局が原発関連の会議を牛耳っていて、脱原発依存が骨抜きにされているという特集記事があり、ため息をついたところですが、こういう時なのよ、どうでもよくなって、日本が滅びるなら滅べという投げやりな気分に襲われるのは。

 そして、こんな程度で簡単に捨て鉢になってはいけないなと(サルでもできる)反省を繰り返す私でありました。

 はるる