修行する人々

 仕事で必要があり、NHKのDVD『永平寺』と『比叡山延暦寺』を視聴。

比叡山 延暦寺 [DVD]

比叡山 延暦寺 [DVD]

 どちらにも大学出たての若い修行僧たちが登場し、何年か既に修行している先輩僧が一人出てきます。
 

 永平寺、かつて私が高校生だった頃にもNHKで特集があって、その時は鳥肌が立つくらい感動した記憶がありました。
 司馬遼太郎がある禅寺の雲水を描写するのに、叩けばカンカンと音がするのではないかと思うほどピンと張り詰めて修行に打ち込んでいるという風に書いていたのを読んだことがありますが(『街道をゆく』シリーズだったと思う)、そういう感じがビシビシと画面から伝わってきて、高校生の私は心の底から揺さぶられ、もし男性に生まれていたら、高校卒業後に永平寺という選択肢を真剣に考えたかも知れないほど、感動しました。
 なので、ちょっと期待があったんですよ、このDVDにも。

 ところが。

 観終わったときには、上田紀行が『がんばれ仏教!』の中で、かなり手厳しく永平寺のことを書いていたことに、納得している私がいました。

がんばれ仏教! (NHKブックス)

がんばれ仏教! (NHKブックス)

 永平寺の山門から中にいれてもらえず修行希望者はただ外で待たされるという、永平寺といえばこれという感じの最初の場面からして、なんだかなあ、こりゃマニュアル化してるよという感じがしてしまいまして…。

 その後の、修行の一年の映像を観終ったときには、この雲水たちは、外側の「行」をマニュアルどおり一年の辛抱とばかりにやっていて、内側の修行の本質部分は何も考えていないという印象を受けてしまい、うーんと唸ってしまいました。

 さすがに修行3年目の首座を務めた雲水さんは佇まいが違っていて好感を持ちましたが、それでも、法戦式は覚えたせりふを怒鳴りあうイベント化してると感じてしまった。今の言い方で自分の考えていることを言い表してもらいたいなあ。
 もっとも、法戦式についてはマンガの『ファンシィダンス』の印象が強いので、偏見かもしれません。間違っていたらごめんなさい。

ファンシィダンス (4) (小学館文庫)

ファンシィダンス (4) (小学館文庫)

※映画もよかったのですが、個人的には原作のマンガ版のほうがより好きでした。昔の表紙のほうが良かったのに変わってしまっているのが残念。


 朝4時に起きてもおらず、精進料理を食べてもおらず、雲水がしている修行などこれっぽっちもしていない私がこんな偉そうなこというのは筋違いなんですけど、でもね――。

 期待が高すぎたか。

 昔見た永平寺の映像が記憶の中でどんどん理想化されていったのか、それともかつては違ったのか。なんともいえません。


 『比叡山延暦寺』のほうも、お寺の跡継ぎになる若者たちの修行云々のところはうーんという感じだったのですが、ほほうと思ったのは、千日回峰行をやっている若い僧侶の顔。
 一つのことに集中して、叩けばカンカンと音が鳴りそうな顔で、ひらすら山道を歩いていて、その顔がよかった。

 別に、延暦寺永平寺より立派だとかそういうことではないです、念のため。
 個人的には護摩を焚いたり真言を唱えたりしている仏教よりも、座禅している仏教のほうが性に合いますし。


 他宗教の修行者に対する私の視線は、私の宗教であるカトリックの修道者に対する人々の視線なんだろうな。

 本当にやっていないことは、見れば分ってしまう。
 真剣に祈っていなければ、すぐばれる。


 いろいろと考えさせられたDVD視聴でありました。


 自分を手放していくこと。

 神に委ねきること。

 言うは易く、行うは難し、であります。

 
はるる