13デイズ再び

 映画『13デイズ』を返す前にまた視聴してしまった^^;。
 

13デイズ [DVD]

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 前回は、映画のストーリーに乗せられて観てしまいましたが(RFK狙いだったし)、今回はさすがにもう少しいろいろと考えながら観ました。

 脚本には必ずどこかに立脚点を定めないといけないものなのでしょうから、それが徹底的にアメリカの立場からキューバ危機を描くという選択になっているのは、まあ仕方がないことかもしれません。(ソ連13デイズがすごく見たい!ソ連側はどう会議をし、どのように考えていたのか。)

 ですが、結構露骨にアメリカのエゴが描かれているなあと感じたのも事実。

 特に気になったのは

  1. アメリカ合衆国中南米を自国の裏庭とみなして、そこで好き勝手できるのは自分だと考えており、実際好き勝手をしているということ。(主権国家キューバの領空をあんなに侵犯して偵察機を飛ばしていいのか、ケネディ
  2. ケネディ政権から政権転覆を企てられ、経済封鎖を受けて苦しんでいるキューバから13日間を見たら、まるっきり様相は違って見えるであろうということ。自分の国の立場をソ連のミサイル導入で強化したいのは当然。

 です。

 カストロは、ミサイルが撤去されることが決定したとき、怒りのあまり壁を蹴ってそこにあった鏡を割ってしまったとか。
 気持ち分るなあ。大国どうしが勝手に取引して自分は蚊帳の外だもの。これはあんまりだ。

 というわけで、EX-COM(ミサイル危機に対する対策会議)の会議をはじめとする様々なディスカッションシーンは十分に堪能して楽しんだ映画でしたが、苦味が残ったのも事実。


 と言いつつ、最初のEX-COMの会議シーンで、ハト派のボビーが全面空爆を主張するタカ派に対して叫ぶ

 Now, there is more than one option here. And if one isn't occurring to us, it's because we haven't thought hard enough!
(拙訳:他にも選択肢があるはずだ。それを思いつけないのは、まだ本当には真剣に考えていないからだ!)

に感銘を受けていた私。そういうことは、実は私たちの生活の中でよくあるなあと一人頷いてました。
 もうこれしかないと決め込んで、視野を広く持って真剣に考え抜かないという怠惰。(もっとも強硬派から見れば、RFKは空襲や侵攻はなしと最初から決め込んでいて視野が狭いということになるのかな。)

 この映画のボビー、短気だったといわれる彼らしさが溢れており(当人も自分の欠点は短気だと言っていた*1)、RFK役のスティーブン・カウプはすごく演技が上手で感心しましたが、実際の会議でのボビーは(マクナマラによれば)、「いつも落ち着いていて、冷静だった。確信を持っていたが、控え目だった。いらいらもしなかったし、がやがや騒ぐことも決してなかった」(『13日間』につけられたマクナマラの文章より)そうなので、全然事実とは違うわけですね。
 映画じゃ、ボビーは何度も強硬派に対して怒鳴っている(^_^;)。いつも怒っているし。
 けんかしているボビーを見るのは楽しかったが。

 私が一番好きなのは、映画の山場、ドブルイニン大使とRFKの交渉場面だけど(こういうのを見ると、この映画の真の主役はボビーだなと思ってしまうのであった。)
 
 映画では彼の攻撃的な側面がよく演じられていた…のかな?ご当人に会ったことないから分らないけど。
 
 あの攻撃力が貧困問題に対して向かっていたら、さぞかし凄かったろうと思うと、彼を大統領にしてみたかったですよ。

 『1968』ボビー編は次回にでも。

 はるる
 

*1:おかげで短い生涯なのに敵がたくさんいた。私が好きなエピソードは、上院の小委員会に提出された貧困対策法案が、RFKの目には不適切で貧しい人々に対して過酷なだけにしか見えなかったため、委員長に対して、この法案を必ず議論にかけることと、その際には必ず自分を議論に入れることを約束させていたのに、彼が別の小委員会に出ている間に、議論なしにこの法案は委員会を通過して上に上げられてしまい、それを知ったRFKの怒りが炸裂、委員長に怒りをぶつける彼の怒鳴り声は上院の廊下まで響き渡り、冷静に戻ったときは時既に遅しだったというもの。こうやって、短気でJFKみたいに怒りを抑えられないから敵を増やすんだな。これではただのバカじゃん。…政治家に向いてないぞ、ボビー。