新教皇

 …まさか、ラッチンガー枢機卿がなるとは……。
 中継ぎで、高齢の方が選出されるかな、とは思っていましたが、うーん、よもやこの方とは思っていませんでした。やはり、神の思いと人の思いは違いますねえ。確かに、ヴァチカンもいきなり保守路線から方向転換するわけにいかないでしょうし、ここはしばらく、路線を維持してから、ゆっくり変化に向かう…のかな?何にせよ、神様が選ばれた方ですから、いいですけど。
 
 TIMEはラッチンガ―枢機卿の名は候補者としてあげてはいても、ならないだろうと見ていましたが、見事にはずれましたね。
 ちなみに、TIMEには、The Comeing Catholic Churchの著者、David Gibsonが、新教皇に求められている要素として、数か国語が話せること、いつでも笑顔の準備ができている(少なくとも、しかめ面していていもテレビ映りがよいこと)、そして彼が何をしてきたかも大事だが、どのように素晴らしい人格かでニュースになり得ること(この辺りは意訳しまくり)をあげてましたが、新教皇ベネディクト16世は、どうでしょう?
 TIMEが注目していたのは、オーストリアのSchonborn枢機卿(60歳)で、ドイツ語圏ということでは、ある程度、予測は正しかったともいえないこともない、かも。(この枢機卿については、The Economistも名をあげてました。)
 この方、笑顔がステキな方で、教皇にはならないだろうと思いつつも、個人的にはこの方、いいかもとちょっとだけ期待してしまいました。
 
 The Economistは、イギリスの雑誌だからか、かなり冷静にカトリック教会の未来について分析した記事を載せてましたね。(特集タイトルも、そのままずばり The future of the Catholic churchでした。)次の教皇にとって、イスラムとの関係が最大のチャレンジになる、と予言されてます。
 この雑誌は、候補者をthird-world conservatives(ナイジェリアのアリンゼ枢機卿)、third-world radicals(ホンジュラズのマラディアガ枢機卿)、European bridge-builder(上記のSchonborn枢機卿)、careerist bureaucrat(イタリアのソダノ枢機卿)に分類してました。

 また、Newsweekは、故ヨハネ・パウロ二世について大々的に取り上げて多くの紙面を割き、教皇候補者についてはさして触れていませんでしたけれども(Newsweekの記事で、私はヨハネ・パウロ2世が甘いものに目がなかった人だということを知りました。)

 個人的には、ラテン・アメリカ出身の方が教皇様になっていただきたかったんですが、やっぱり時期尚早だったんでしょうね。

 ところで、新教皇がベネディクト16世を名乗られたので、ついこんな本を思い出してしまいました。

More Than A Skeleton: A Novel

More Than A Skeleton: A Novel

この本、神学スリラーと呼ばれていて、それはまあそうなんですが、結構内容はとんでもない。(内容のぶっ飛びぶりは、『ダ・ヴィンチ・コード』にも負けないかも。)要するに、20世紀の終りに、ヨシュア・ベン・ヨセフと名乗るユダヤ人がイスラエルに現れ、どの言語も全くなまりなく話し、12人の弟子を集め、病人を癒し、盲人の目を開き、と次々と奇蹟を行うわけです。で、主人公の聖書学者(だったと思うんですが)ジョナサン・ウェーバーは、この人物が、最後の審判の前に、もう一度この世にやってくることになっていた(しかし、それは人類には明かされていなかった!)本物のイエス・キリストなのかどうかという謎を解かねばならないわけ。
 そこに、アメリカで問題になっているキリスト教原理主義者の運動が絡み、モサドが絡み、発掘されたモザイク画とそこに書かれている文章の謎が絡み、とこの物語は結構複雑なのですが、最後の方で、このヨシュア・ベン・ヨセフは、イエス・キリストであるとヴァチカンに認められ(^^;)、第3ヴァチカン公会議が開かれ(^^;)と、どんどんすごい方向に話は展開していきます。そして、この公会議を開くのが!ベネディクト16世なんですよ。
 いや〜、新聞でこの名前を目にしたとき、パッとこの小説が思い出されて、一人で受けてました。

 などと馬鹿なこと言ってないで、新教皇のことを偏見を捨てて考えるために、ちゃんと著作の一つも読まないとな〜。私の、この方へのイメージは「解放の神学」をめぐる論争を通して形成されれてしまっているので、公平とはいえないでしょう。昔、気鋭の神学者として大変期待を集めていた頃に書かれた『キリスト教入門』でも手始めに読んでみようかしらと思っています。 

 はるる