ジュリアンその2
このところ、再び軽いメニエール症状に襲われていますが、まあ元気です。
先日、偶然目に留まった随筆を読みましたら、筆者はかつてメニエール症候群に苦しんだ経験がある方で、そこにメニエールの原因はストレスとありました。
なるほど、ストレスですか。
ストレスならいっぱいあるぞ。
そして、数あるストレス源の一つが、ジュリアンのことをブログに書いてない、これをなんでもいいから終わらせないと次にいけない〜という私の律儀さ、ありていに言えば小心さであることは明らかです。というわけで、ノーリッジのジュリアンに戻ってまいりました。
ジュリアンについて一番いい本は、たぶん、Grace Jantzen の Julian of Norwichだと思います(そんなに関連本を読んだわけではないけど)。本気で彼女のことを知りたい方は、こちらをどうぞ。
Julian of Norwich: Mystic and Theologian
- 作者: Grace M. Jantzen
- 出版社/メーカー: Paulist Pr
- 発売日: 1988/09/01
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また、読み易いのは、Frodo Okulam The Julian Mystiqueではないかと思います。(ジャンツェンは専門書!という感じですが、こちらはちょっと肩の力を抜いた感じで、英語も平易です。)
The Julian Mystique: Her Life and Teachings
- 作者: Frodo Okulam
- 出版社/メーカー: Twenty-Third Publications
- 発売日: 1998/01/01
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さて、ジュリアンは1373年5月、30歳の時に「啓示」を体験しました。彼女は「啓示」は16あったと述べ、それは24時間とちょっと続いたとされています。
この「啓示」の内容も大事ですが、「啓示」に基づいてジュリアンが20年の歳月をかけて祈り考察し神からの照らしを受けて得た「神学」も大変重要です。
私が好きな箇所は、例えばこういうところです。
そして、このとき、彼は小さな物を見せた。それはすぐりの実ほどの大きさで、私の手の中にあった…球のように丸かった。私はそれを理解力の目で眺めて思った―「これはいったい何だろう。」そのあまりの小ささのせいで、突然、無に帰するのではないかと思ったので、それが消えなかったのに驚いた。そして私の理解力の中で答えが与えられた。神が愛しているからそれは存在し、存在し続けるのだ。全ての物は神の愛によって存在を与えられているのだ。(『奇蹟を見た七人の女性神秘家の肖像』の訳を引用)
12世紀以降、キリスト教の霊性に重大な変化が起こりました。クレルヴォーのベルナルドはその変化を引き起こした人物の一人です。それまで判事のように考えられていた神が、愛の神として認識され、キリストの母的な愛が強調されるようになりました。実際、シトー会の文書には、イエスは母だといった言い回しがしきりに登場するようになります。(この辺りの詳しいことは、うろ覚えの私の駄文ではなく、このBynum先生の著作をお読み下さい。目からウロコです。)
Jesus as Mother (Center for Medieval and Renaissance Studies, UCLA)
- 作者: Caroline Walker Bynum
- 出版社/メーカー: University of California Press
- 発売日: 1984/06/13
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そうした霊的な流れの影響を背景にして、ジュリアンはしつこいほど、ロング・テキストの中で、イエス・キリスト(神)は我らの母であり、イエスには母親の子に対する愛と同じ愛があると主張しました。フリンダースは、キリスト=母という主題は、何人もの神秘家や神学者が触れているが、ジュリアンほど完全に、また真の意味を理解して論じた人はいなかったと書いています。
ジュリアンは神の全能=父、神の叡智=母(イエス)、神の愛と善さ=聖霊と書き、父なる神は物事の基礎であるのに対し、母であるキリストは私たちを養い育てると言います。
そして、「母」という言葉はあまりにも甘美であまりにも優しいので、神と命とあらゆるものの真の母である神について以外、誰にも何にもこの言葉を使うことは出来ない(ロング・テキスト60章)とまで言っています。
かつて、神秘神学に関する講義を取った時、10ページエッセイを書かねばならず、私はテーマにジュリアンを選びました。主題は「母なるイエス」。
で、その時、ある程度ジュリアンについての本や論文を読んだのですが、今回あらためて母なるイエスについて書こうとして、かなり(というより殆ど)忘れている…という事実に気がついたのでありました。あの苦労はナンだったのか…。人生ってこんなものね。フッ。
そうそう、アメリカでよく見かけるジュリアンのイコンというのがあって、それには猫が描かれています。私もこのイコン、持ってまして部屋に飾ってます。
隠修女たちはネズミ対策に猫を飼っていたといわれており、それでイコンに猫、であるらしい。
その絵が見たい方は、下の表紙をよーくご覧下さい。右上がジュリアンです。
All Saints: Daily Reflections on Saints, Prophets, and Witnesses for Our Time
- 作者: Robert Ellsberg
- 出版社/メーカー: Crossroad Pub Co
- 発売日: 1997/09/01
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ちなみに、この本、著者が聖人と考える人々とキリスト教の聖人とを混ぜこぜで書いてまして、なかなか面白い本です。365日、日めくりカレンダーぽく、毎日違う「聖人」が載っていて、解説がついてます。例えば、『シンドラーのリスト』のシンドラーさんは4月28日に載っています。
今日、10月20日はJerzy Popieluszkoなる司祭で、彼はポーランドの「連帯」運動に関わり、1984年秘密警察に誘拐されて、生きたまま縛られて、重しの石と共に水に放り込まれて「殉教」した人、だそうです。
では。これで、一つストレスが減ったわ。
はるる