「日本」という国号

 神野志(こうのし)さんの『「日本」とは何か』を昨日読了。(関係ないけど、この方の苗字、すごくないですか、神の志ですよ。)

「日本」とは何か (講談社現代新書)

「日本」とは何か (講談社現代新書)

 私は日本人の歴史的な自国意識とか対外認識の内容とか変遷とかにとても関心がある人間なので、興味深く読みました。
 古代において「帝国」として振舞おうとした日本にとって、朝鮮半島の国々は帝国に不可欠な服属国家として位置づけられていたという辺りは、私のこれまでの理解もその通りだったんで、ふんふんと読んでいたのですが、中国がこの国号を承認したのはなぜかという辺りから、どんどん面白くなってきて、一気読み。
 
 「日本」=太陽が昇るところというのは、中国から見ての話なわけで、古代中国の世界像の中に東の日が昇る地を「日域」「日下」という語で呼び、「日本」という語もありえた、そういう意味では、この国号は中国の世界像に基づくもの、つまり外から来たものなのに、その「日本」に自分たち自身にとっての価値を与え、意味づけをし直した=朝鮮との関係における帝国「日本」という認識を作り上げたということ、しかし、平安時代以降、「日本」という国号は、外から来たもの、自己を確認し、自らを表すものとしてみなされなくなったこと、それは朝鮮との関係が空洞化したからであること、「日本」に代わって自己確認を求めた先は、「やまと」であったということ。こうしたことは、大変興味深い点でした。
 
追記:だから、漢才(かんざい)や漢心(からごころ)に対して「大和魂」(やまとだましい)とか「大和心」(やまとごころ)と言うのでしょうかね?「日本魂」(にほんだましい)とは言わないで。「日本」は、外から内に取り入れた本来自分たちのものではないということで?すると、「和」というのは、どこから来たのだろう?「和魂洋才」とか「和物」などと言いますが。 「倭」が「和」になったのかなあ??そういえば、『「日本」とは何か』に、「倭」というのが、どういう意味なのか古代からもう分からなくなっていたとあって、驚きました。


 本書の後半も、「日本」という国号を自分たちのものとして再び受け入れるために、どのような解釈が生まれたか(日神=天照大神の国という神道的な解釈や、大日如来の本国という仏教的解釈など)、あるいは「日本」以外の様々な呼称(特に「東海姫氏国」)への解釈に見られる自己確認のあり方など、面白かったですが、私にとっては前半の方がインパクトありました。解釈の話などは、他の研究本でも言及されていますので。
 
 これを読んでいて、自然に黒田日出男さんの『龍の棲む日本』や市川浩史さんの『日本中世の光と影』『日本中世の歴史意識』などと重ね合わせ、「日本」という国号を持つ国家がどのような世界観、自意識を持って存在していたのか、いろいろ視野が広がるような気分になりました。

 黒田さんの『龍の棲む日本』も、知的な刺激に満ちた本です。なぜ、中世の日本地図を龍が取り囲んでいるのか、なぜ日本の形は独鈷の形をしているのか。謎がもう魅力的。黒田氏の本は、どれも知的に本当に刺激されるので、好きです。この本もお勧め!です。

龍の棲む日本 (岩波新書)

龍の棲む日本 (岩波新書)

日本中世の歴史意識―三国・末法・日本

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はるる