スローでいこう(その2)
私がスローにやっている間にも世の中はどんどん動くもので、ロンドンがオリンピック開催地になったと思ったら、今度はいきなりテロ。イギリスの人々にとっては天国と地獄を両日中に見たという感じで、なんとも言葉を失います。
テロは、イラクに自衛隊派遣している日本も他人事ではないですしね。通勤ラッシュの新宿駅で自爆テロなどされたら、その結果は考えるのもおぞましいです…。
上記のような話題を書いて、それではと『フローフードな人生!』についての話をするのは一見激しくずれているみたいですが、根本的問題ということでは、実はずれていないかもと思っています。
この本はイタリアは小さな町ブラで始まったスローフード運動をめぐるノンフィクションですが、ここで取り上げられている「スローフード」というのは、ゆっくり食べましょうとかじっくり時間をかけて凝った食事を作りましょうといったことではありません。
効率性、生産性の名のもとに世界の画一化を暴力的に推し進めるファーストフード的価値観、猛威を振るうグローバリゼーション推進の生き方、つまりスローフード協会が出した「スローフード宣言」言うところの「ファーストライフ」という「全世界的狂気」。
こういったものに対して、NO!の声を挙げ、各地が育んできた豊かな食文化を初めとする様々な文化と、人間関係と、地球環境を守ろうという動き。それが、「スローフード」ということ…だと思います。私の理解間違っていたら、ごめんなさい〜。
単なるファーストフード反対!といった話ではナイのですね。
一知半解の私がぐだぐだ書くより、ここからは本からの引用といきましょう。
食べることは単に身体に栄養を取り込むだけの作業などではない。それは、コミュニケーションの手段であり、イメージの具現化であり、生活習慣と自らの置かれた状況、そして行動の現われでもある。
(中略)
現代の子供の好き嫌いの激しさは、ごくわずかな幅の味の体験しかないことに端を発している。若者への食の教育は、一見、単純な物質生活の問題にみえて、実は恐ろしく複雑な心理的示唆を与えてくれることだろう…。(35p)
「いいかい、食ってもんは、コミュニケーションの手段で、異文化との無言の対話なんだ。そして大人と食事を共にすることは子供たちにとって社会化への糸口なんだ。……食の世界的な均質化は、やがては、食文化における父権の喪失をもたらすだろう。僕が懸念するのは、このままほっておけば、社会全体が、総大人こども化する羽目になるってことなんだよ。」(84〜85pp)
「スローな食卓が、常に心地よいばかりでもないことは、結婚式の披露宴で誰もが実感していることだろう。それにファーストフードが、かならず不愉快で、質が悪いとも限らない。
それは単に注意を払うか否かの問題である。……そうした(引用者注:素材、食べ方、共に食べる相手などなどに対して)無限の注意を傾けることで、いかなる環境も同様の尊厳をもって対応することができる。……選ぶことなく、評価もせず、理解しようともしない。食べ物に対して、まったく注意をはらうことなく、それを考えもなく口に運ぶ。思うに、それこそが真のファーストフードである。」(125〜126pp)
味は、我々が飲んだり、食べたりするものが与える視覚、味覚、嗅覚、触覚、そして聴覚といった感覚の総合的メッセージなのです。コミュニケーションの手段であり、文化と共生の源、子供たちにおいては成長の源なのです。したがって味わう力の退行は、表現力、ひいては言語の退行をもたらすのです。」(273p)
大げさな言い方をすれば、スローフードとは、口から入れる食べ物を通じて、自分と世界との関係をゆっくりと問い直すことにほかならない。自分と友、自分と家族、自分と社会、自分と自然、自分と地球全体の関係を、である。(371p)
ファーストフードを支えている価値観、つまり、効率のよさ、予測可能性の高さ、速さ、テクノロジーによる徹底した管理、そういったものがよきものとされ、社会全体に入り込むことに対して、食を通じて抵抗する。それが、この動きかなと、私は思っています。
各地域で育った伝統的な家庭料理を家でちゃんと作り、なるべく多種多様な食材を消滅から守り、個食を避けて、共同体として食事をする。
「ともに食べることはともに生きることと同義なんだよ。」(33p)
いわゆる「マクドナルド化」から社会を方向転換させていく、それは多分、全世界を覆いつつあるグローバル化した経済構造のあり方も根本的に変化させることが含まれるはずで、その変化は、今のテロを生み出す土壌である、すさまじい貧富の格差を変えることになるのではないか。
というわけで、最初の話とスローフードがつながるんですけど、えー、どうでしょうか(^_^;)。
いや、そもそも、ここまで読んでくださる根気ある方がどれだけおられるのか??
豊かさを享受する側にいる私だって、こんなに速く速くと追い立てられる今の日本社会はどっかおかしいと感じるわけで、結局富める者だって、本当には幸せとはいえないのではないか。つまり、今の世界で、真の「勝ち組」はいなくて、自分の首を自分で絞めているだけでは?という気がするんですが。
もっとのんびりゆっくり生きられたらな〜と思うんですけどね。
JRももっと「ひかり」を増発してね。
この本を読んで、私の中で関連づけられた本たちは以下のとおりです。
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実は、最後の二冊、読んでいません。読まねばと思いつつ、思いつつ〜であります。夏休みにもで読んでみます(といって、またまた積読が増えるなあ…)。
映画『スーパーサイズ・ミー』を見逃してしまったのが残念!
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はるる