ロバート・ケネディ
仕事が押しているんだからこんなことしてる場合じゃないと、分っているのですが、せっかくの機会(?)なのでもう少しロバート・F・ケネディについて書きます。(本当に、勝手に独り言状態やね。)
たぶん私が彼に思い入れ深いのは、アメリカで精神分析に通っていて自分自身が一番変化しようとしていた時にボビーと「出会った」からだと思います。
というのは、ボビーについて私が最も感銘を受けたのは、彼には突出した「成長する能力」があったという点だったから。
人間、誰でも成長するわけですが、彼には体験を通じて劇的なまでに成長していく力があった。
JFKが暗殺されなければ、ロバートは映画『13デイズ』に出てくるような、無慈悲と囁かれる、有能だけど他の政治家とそんなに違わない普通の政治家で終わっていた可能性があります。
JFKが死ぬまで、RFKの役割は偉大な兄を支える弟、要は裏方で、彼はそれ以上の役割を自分が果たすとは考えていなかったらしい。
尊敬していた兄が殺されて深く傷ついたボビーは、ものすごく苦しみました。
その苦しみを通じて、彼はもともと持っていた他人に共感する能力を大きく開花していきました。
そして、共感するだけでなく、彼は、たとえ自分がつらくても、変わるべきときには変わることを受け入れられる人でした。これが、RFKを他の政治家が超えなかった一線を越え得た政治家にしたと思います。
例えば、彼は司法長官時代に公民権運動を支援したことを誇りに思い、黒人問題はある程度済んだように思っていた。黒人学生の大学入学に対し頑強に抵抗するアラバマ州(…だったかな?)のウォレス知事に、電話で「あなたはそれでもアメリカ市民か!」と怒鳴りつけたという話もあるし。
しかし、上院議員になったあと(3月12日追記:すみません、これは司法長官時代の出来事でした)、黒人のリーダーたちに会い、彼らから厳しい言葉を浴びて、自分がしょせんは白人の視点からしか物事を観ていなかったことを思い知らされ、大きな衝撃を受けます。そしてこの後、彼は自分が立つ位置、視点を黒人、貧しい白人、ヒスパニック、ネイティブアメリカンの側に変えていきました。この変化がすばらしくて、一番感動したところだし、尊敬しているところです。
お金持ちの白人なのに(おまけにカトリックだし)、あれほどまでに貧しい黒人から敬愛された政治家はRFK以後、一人もいません。たぶん、前にもいないのでは?よく知りませんが。
というわけで、思い入れが深いわけです、ボビーには。
ボビーについての本は、前に挙げた“RFK”が一番好きですが、“Robert Kennedy and His Times"もいいです。著者のシュレジンガーさんは今年の2月28日(ついこの間)、お亡くなりになりました。
- 作者: Arthur M. Schlesinger
- 出版社/メーカー: Mariner Books
- 発売日: 2002/06/03
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ボビーの政治的な側面を知りたいなあと思って本を探していて見つけたのが、これ。
- 作者: Joseph A. Palermo
- 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr
- 発売日: 2001/06/01
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大学教授が書いた本だったからか、なんだか読みづらかった記憶があるなあ。恥ずかしながら、読み通してません…。
著者はRFKをセレブで選挙に出た最初の人と位置づけていたと思います。確かに有能なタレント議員みたいなものだったかも。人がすぐに彼に触りたがったり、握手したがったりするところは、ロック歌手みたいだったものね。(3月12日追記:これは、下に挙げた本に書いてあることでした。ピンナップされた最初の政治家だったと評されています。アイドルやね^^;。)
実はこの本の購入動機の半分はボビーの政治的立場を理解したいという真面目なものだったのですが、あとの半分は、ジャケ買いでしたねえ。デイジーを手渡されるRFKの表紙に目がハートになって買ったよーな気が…^^;;。
ところで、ボビーはバチカン公会議前のアイルランド系カトリック信徒の典型みたいな人でした。四旬節の節制を守り、どこかの巡礼地で長い階段をあがるのに、ロザリオ片手に膝を使って(つまり、足でとんとん上っていくのではなく)最後までのぼるような人だった。子どもは11人もいるし〜。
ケネディ家の男たちで唯一本気でカトリックを信仰していたと言われています。子どもの頃は侍者をしていて、イギリス時代に彼の世話をしたナニーはいつかこの子はきっと神父になると思っていたそうです。
映画『ボビー』のラスト近く、撃たれて床に倒れたボビーにメキシコ人のホセがロザリオを握らせるシーンがあるのは、、ボビーのカトリック信仰を象徴していると思います。(追記:と、思っていたら、実際に床に倒れたボビーの写真を見たら、本当に誰かが握らせたらしいロザリオを握り締めていた。事実だったんだ・・・。)
ちなみに、RFKは、アメリカのカトリック教会は公民権運動に対して反応が鈍いと、公に批判しています。教皇パウロ6世に噛み付いて、けんかしていた(全く・・・^_^;)。
司教たちは共和党を、シスターたちは民主党を応援すると言ったのも彼。(これは今でもそのとーり。)
なので、RFKの宗教的側面を押さえておくことが彼を理解するのに不可欠だなと思って買ったのがこれ。
Robert F. Kennedy: A Spiritual Biography (Lives and Legacies)
- 作者: Konstantin Sidorenko
- 出版社/メーカー: Crossroad Pub Co
- 発売日: 2000/12
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内容はまあまあだった記憶がある。
上記に書いたボビーのカトリック信徒としての振る舞いについての情報ソースはこの本だったと思います。(すべて記憶で書いているので、情報源はごちゃごちゃになっている可能性あり。)
図書館で読んで、それなりに感心したけど買わないで終わったのが、これ。いくつかの主題に沿ってボビーの演説などから文章を抜き出して編纂したアンソロジーで、息子が編集していた。60年代に青春を過ごした人にはいいかもって感じがしないでもなかった。
Make Gentle the Life of This World: The Vision of Robert F. Kennedy
- 作者: Maxwell Taylor Kennedy
- 出版社/メーカー: Broadway Books
- 発売日: 1999/05/04
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この題名、ボビーの有名な、キング牧師が殺された夜に即興でした演説の締めくくりに出てくる言葉を取ってますね。
ああいう名演説を即興でやれたということに感心してしまう、単純な私であります。
初めて、映像付きでこの演説を聴いたときは、感動したなあ。(『ボビー』にもちょっとこの演説は流れます。)
視聴したい方(おられるのか?)は、こちらをどうぞ。
http://www.americanrhetoric.com/speeches/rfkonmlkdeath.html
映像付きで演説が聞けますが、残念ながら最後まで流してくれない。
演説を全部聴きたい(だから、そんな人がいるのか?)方は、下記でどうぞ。
http://www.jfklibrary.org/Historical+Resources/Archives/Reference+Desk/Speeches/RFK/Statement+on+the+Assassination+of+Martin+Luther+King.htm
黒人が白人のあなたに何をするかわからないからと、周りの人が制止するのを振り切って、ボビーはこの演説をしました。キング牧師が暗殺された夜、アメリカの60(76とか100以上とか168とかいろんな説あり)にのぼる都市で黒人暴動が起こったのに、彼が演説をしたインディアナポリスは静かでした。
これは、別に買わなくてもいいけど、見たいなあと思っている写真集。どっかの図書館にないかなあ。
- 作者: Paul Fusco
- 出版社/メーカー: Dewi Lewis Publishing
- 発売日: 2001/04/09
- メディア: ハードカバー
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そういえば、ジョセフⅢだったかロバートJrだったか、政治家になった息子が、SOA(School of the Americas)反対運動に関係していて、うーむ、さすがはボビーの息子じゃと思いましたよ。
SOAとそれに対する反対については、こちらをどうぞ。http://www.soaw.org/new/
2003年にPBSが放映したThe Kennedysというドキュメンタリーで、ケネディ家に仕えていた女性がインタビューで、RFK暗殺の報せを受けとった両親について語るシーンがありました。
JFKが殺された時は、驚異的な自制心で取り乱さなかった二人ですが、もう一人子どもが殺されたのを知ったときは、その衝撃に耐え得なかった。
父親のジョセフは手放しで声をあげて泣き、母親のローズはMy Son! My Son!とただ叫び続けていたそうです。(カトリック信仰の篤かったローズにとって、ロバートが一番お気に入りの息子だったらしい。)
そういうことを思い出しながら、『ボビー』を観たですよ。
はあ、気が済んだ。さ、仕事、仕事。
はるる