自己責任・・・
『新約聖書』の中のルカ福音書に載っている有名な、いわゆる「放蕩息子のたとえ」について、若い人々が放蕩息子の弟を叩く、その叩き方の枠組みが「自己責任」論であることに驚いてしまった今日。
多くの人はこの話を読めば、弟より兄に同情するのはある意味人間の普通の感情だと思うので(私も、当初兄に自分を重ねて読んでました)、そのことには驚かなかったのですが、その論理の枠組みに驚かされた感じです。
自己責任論はばっちり人々の意識に浸透しているのですね。
財産を使い果たして悲惨な境遇になったのは弟の自己責任であり、その責任は自分で負えと放蕩息子を断罪し、その返す刀で、そんな怠け者の息子に対してこの父親は甘すぎる、ニートを甘やかす親そのもの云々、と父親もばっさり斬られ、散々な言われようであります。
怠け者が得するようなことをしているキリスト教の神はおかしい、正直者が馬鹿を見るような話が書いてある聖書は本当に不愉快な本という意見にウームと唸るカトリック信者のおばさんでありました。
で、自己責任絡みで、先週から今週にかけていきなり立て続けに読んでいた若者のワーキングプア問題関係の書籍に関して、正社員の地位確保の自分のことは棚に上げて、読後感を書かせていただきますと。
- 作者: 雨宮処凛
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/03/13
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信じられないような実例が次々と登場して、本当に衝撃でした。弱い立場の人間をここまで食い物にして史上最高の利益を出して恥ずかしくないのか、大手一流企業。
その利益は一体どこに行っているのか?
なぜ、最高額の利益を出しているのに、工場で働く派遣や偽装請負の人々の時給が100円下がるのか?
構造が問題なのに、自己責任の名のもとに個人のせいにされて切り捨てられるのは、酷すぎる。
正社員が昼ごはんを食べる時間はあっても夕食を食べる時間は設定されていないという状況で残業代なしに17時間労働という壮絶な職場の話には絶句しました。むごい。
- 作者: 雨宮処凛/福島みずほ
- 出版社/メーカー: 七つ森書館
- 発売日: 2007/06/27
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- 作者: 湯浅誠
- 出版社/メーカー: 山吹書店
- 発売日: 2007/07
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預貯金(金銭)や親や助け合える関係性(人間関係)、自分に自信がある、気持ちにゆとりがある(精神)など、外からの衝撃を吸収し、かつその人にエネルギーを与えるものを湯浅さんは「溜め」と名づけておられるのですが、個人的には、貧困とはこの「溜め」のない状態だという説明にはとても納得がいった。
これらの本を読んでやっと、以前に読んだ『機会不平等』で語られていたこと、『ネオリベ現代生活批判序説』に書かれていたことがどういうことだったのか理解できた。頭の知識でふわふわしていたのが、いきなり地に足がついたというか、そういうことだったのか!とわーっと身体に迫ってきたというか。
それはいかんだろう!と腹の底から怒りが湧いたし、行動を起こさねばということを切実に感じました。
私がやることなんて多寡が知れていて、焼け石に水というのか蟷螂の斧というのか、という感じですが。
このまま何もしなければボビーにもイエス様にも申し訳ない。
- 作者: 斎藤貴男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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- 作者: 白石嘉治,大野英士
- 出版社/メーカー: 新評論
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はるる