なぜダミアンはアンを殺すのか

 このたび、20年ぶりくらいに『オーメン2』を観て、私にとっての長年の謎が解けました。

 以下、しっかりネタばれしますので、よろしく。


 映画の最初の方で、イスラエルの発掘現場から掘り出された、「バビロンの大淫婦」像というのが出てきます。

 『ヨハネの黙示録』第17章に出てくる女性ですね。(ローマを象徴しているとよく解釈されている。)

 この黙示録の記述どおり、映画の中でこの大淫婦は、七つの頭と十の角を持った獣の上に座っているのですが、考古学者がこの像を解説して、一つ一つの頭に名前が付いているんだと言って、この女性が座っている頭には「孤独者(The Desolate One)」と彫られているというのです。
 その解説を聞きながら、ダミアンを引き取って育てている伯母さんのアンが「いやだわ」てなことを言う。

 で、今回見直してみて、これが最後のシーンの伏線なのだということに気づきました。

 
 ダミアンはマークを説得するときに、The Desolate Oneが僕の中で復活した!と叫ぶところがあって、つまりダミアン=「孤独者」なわけです。

 映画の最後でアンがダミアンを守っている悪魔の使徒だというのが判明するんですけど、それはつまり、アン=The Desolate Oneの上に座っている大淫婦だったという構造になっていたということです。

 さて、私の長年の謎といいますのは、どうしてダミアンは自分を守ってくれたアンを焼き殺さなきゃいけなかったんだ?というものでした。

 せっかく身を挺して自分を守ってくれた忠実な僕なのに、なにも殺さなくてもいいでしょう?とずっと疑問だったんですね。悪魔がすることだからっていえば、まあそうなんですけども。

 でも、他の人が殺されるのには、一応理由がある(正体を暴こうとしたからとか、気づきそうになったからとか)のに対し、アンが殺されるのに理由がないように思われて、変だなあと思っていたのです。


 しかーし!今回見直して、わかりましたよ。どうしてアンを殺すのかが。

 要するに、黙示録に書いてあるから。

 『ヨハネの黙示録』第17章16節に

 また、あなたが見た十本の角ととあの獣は、この淫婦を憎み、身につけた物をはぎ取って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くすであろう。

 とあって、だから、アンは火で焼かれて殺されるし、彼女がのた打ち回って死んでいくのをダミアンは冷やかに見守るのだ!

 そうかー、聖書に乗っ取っていたんだ〜というわけで、今回ずっと疑問だったことが解消されて、嬉しかったのでありました。

 すみません、それだけなんです。

 
 そういえば、『オーメン2』のパンフレットに

ユダヤ人がシオンの山に帰ると/彗星が夜空を引き裂き/聖なるローマ帝国が興ると/あなたと私は死なねばならぬ。」

 
 という『黙示録』からの引用が冒頭に書いてあると記述しているブログを見ましたが、『ヨハネの黙示録』にそんな箇所はないはず。

 偽典か外典にでもあるのか、ハリウッドが映画用にでっちあげたか?



 人を睨みつけたら相手が苦しみ出すんだから、うかつに睨めません。悪魔の子も大変です。

 はるる