吉田秀和氏

 先ほど、NHKのニュースで、吉田秀和氏が亡くなられたことを知りました。

 クラシック音楽をはじめ美術や文学など幅広い分野で、多くの優れた評論を手がけた評論家で文化勲章受章者の吉田秀和さんが、今月22日に急性心不全のため、神奈川県内の自宅で亡くなっていたことが分かりました。98歳でした。

 吉田さんは、大正2年に東京で生まれ、当時の東京帝国大学の文学部を卒業後、戦後まもなく音楽専門誌に連載したモーツァルトの評論で注目を集めました。
クラシック音楽の豊富な知識に基づいた独自の評論を次々に発表して、日本に音楽評論の分野を確立したほか、美術や文学など幅広いジャンルで多くの優れた評論を残しました。


 また、昭和23年に、現在の桐朋学園音楽部門の前身に当たる「子供のための音楽教室」の創設にかかわったほか、茨城県水戸芸術館の館長を務めるなど、音楽教育や文化の発展にも力を尽くし、平成18年に文化勲章を受章しました。
吉田さんは、90歳をすぎても精力的に執筆活動を続け、最近も特に体調に問題はなかったということです。


 たまたま私は、この間から何度も、吉田秀和氏はまだお元気かなあ、ああいう「人間国宝」のような方がいつか逝かれたら寂しいなあ、と思いをめぐらしていたもので、少し驚きました。(ユングなら、シンクロニシティと言うかしら。)

 死因は老衰のようで、安らかな最期であられたのではと思っておりますが。
 ちょっと悲しい。
 もう新しい吉田さんの文章を読むことはできないのですね。
 あの方の書かれる日本語が本当に好きでした。

 清々しいというのか、清冽な小川が底を流れているような、美しい文章だったと思います。
 人間としても、美しい方だったと感じています。

 私が若かりしときに、吉田秀和氏の文章に出会ったこと、ああいう佇まいの人間性のと知性の在り方に触れたことは、幸せなことでした。

 吉田氏は、今、最愛の奥様との再会を天国で喜んでおられることでしょう。
 

 以下はかつて手元にあって、繰り返し読んだ吉田さんの作品。

名曲三〇〇選―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

名曲三〇〇選―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)


世界のピアニスト―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

世界のピアニスト―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)


私の好きな曲―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

私の好きな曲―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)


主題と変奏 (中公文庫)

主題と変奏 (中公文庫)

 他にも図書館から全集を借りて読んでましたけど、購入してのは、上のものくらいかな。

 『世界のピアニスト』を読んで、グルダやグールドを聴きたくなってCD買ったりしましたねえ。

 そういえば、私は吉田さんの最近の作品を全然読んでいない。

 吉田さんを追悼して、何か一冊購入しようかしら。

 はるる