さらに読書

 前回書こうと思っていて忘れていたこと。

 大したことないですが、『メッセンジャー』の〈村〉はアメリカ合衆国のメタファーで、〈境界〉を閉じるかどうかという話は、現在のトランプ政権のもとのアメリカを予言していたかのような話だなあと思ったということ。

 そして今は、いきなりこの四部作から離れて、津島佑子の遺作『半減期を祝って』を読んでいます。やはり表題作は衝撃的でした。


半減期を祝って

半減期を祝って


 3・11から30年後、独裁政権のもとにあるニホンは、「高貴なヤマト人種」が優遇され、アイヌ人、オキナワ人、トウホク人が差別されるという社会を作りあげ、ASD愛国少年団)に所属している子供たちは、トウホク人を襲撃する「翡翠の夜」という事件を起こし…というディストピア世界がこの短編小説の背景です。
 
 ううむ、『ギヴァー』シリーズに続いて、またもやディストピア小説を読んでしまった。
  

 (前略)いや、とっくに深刻な変化が起きていた。「ASD]を作った現政権はオリンピックの熱狂の余波から生まれたのではなかったか。変化は思いがけないところからはじまった。そして、その変化はもう、だれにも止められない。

 今まで、なにも気がつかないふりをしてきた。気がつきたくない。なにかに気がついたところで、どうすることもできないのだから。

 このところの政治の動きの中で、自分も無力感に苛まれ、「気がつかないふりをしてきた」のではなかったか。

 この部分を読んで、刃を突き付けられた気分になりました。

 この短編小説、何かの書評で評価が高かった記憶があり、読んでみたいと漠然と思っていたのですが、中川成美氏の『戦争をよむ』を読んでいて、最後に紹介されていた、この『半減期を祝って』についての説明文を読んだとき、矢も楯もたまらず読みたくなって図書館で借りて読んだ次第。(ああ、こうやって仕事がおろそかに…。)

 


 こうなったら、ディストピアつながりで、中村文則『R帝国』も読もうかしらん。

 

R帝国

R帝国

 はるる